「社用情報の漏えいが疑われる」「無断副業や競業行為が心配」「勤務時間中の不適切行動を確かめたい」——従業員の素行調査を検討する場面は、経営や人事の現場で少なくありません。一方で、やり方を誤ると個人情報やプライバシー侵害、不正アクセスなどの法令違反に直結します。本稿では、生駒市を中心に企業・団体からの相談を受ける探偵兼行政書士の立場から、従業員の素行調査で「できること/できないこと」を整理し、社内で先にできる確認、探偵へ依頼する場合の方法・費用の考え方、調査後の適切な対応までを実務目線で解説します。読み終えるころには、自社の状況で本当に調査が必要か、必要ならどの順序と体制で進めるべきかを判断できるはずです。
結論と原則:従業員の素行調査は「正当な目的」「必要最小限」「適法な手段」が条件
企業が従業員の素行を確認すること自体は、就業規則の遵守や会社資産の保護、ハラスメント防止など正当な目的があれば可能です。ただし前提は、個人情報保護法等のルールに沿った「利用目的の特定」「適正取得」「第三者提供の管理」「安全管理措置」の徹底、そして不正アクセスや盗聴・盗撮など違法な手段を用いないことです。加えて、調査の必要性と影響を比較衡量し、私生活への過度な介入を避ける配慮が不可欠です。
従業員の素行調査で「適法にできること」と「してはいけないこと」
まずは実務で迷いやすい線引きを、要点から示します。就業規則や社内規程の整備状況により運用は変わるため、下記は一般的な目安です。
適法にできる可能性が高い例(前提条件付き)
- 社内で定めた明確な利用目的に沿った情報収集と記録(例:勤怠・入退室・業務端末の操作ログの保存と点検)。
- 会社が貸与した機器・アカウント・車両の使用状況確認(就業規則や情報セキュリティ規程に明記し、従業員へ事前周知・同意を得ていること)。
- 勤務時間中の行動の客観的確認(出先でのサボタージュ疑い等)を、公共の場所からの観察や聞き取りで行うこと。
- コンプライアンス違反の疑いに関する、社内関係者へのヒアリングと議事録化(誘導尋問や名誉毀損に配慮)。
- 公に閲覧可能な情報(公開SNS・官報・商業登記等)の範囲での確認。
これらは「必要性」と「範囲の限定」「従業員への事前周知(規程・同意)」が鍵です。特に端末ログや位置情報等の扱いは、要配慮情報や過度の監視とならないよう管理策を明確にしてください。
違法・違反になり得るNG例(目的や手段で直ちに危険)
- 従業員や家族の私物スマホ・私物PC・私物SNSアカウントへの無断アクセス、パスワードの取得・使用。
- 住居や私有地への立ち入り、無断の盗聴・盗撮、車両や持ち物への無断GPS機器の取り付け。
- 差別につながる個人情報(家系・宗教・政治・門地・健康状態・出身地など)の収集・評価を採用可否や処分判断に用いること。
- 社内調査の名目で、必要性を欠いた広範なプライバシー調査(恋愛関係、家族構成の詳細、私生活の監視等)。
- 「結果ありき」の結論誘導、虚偽の報告書作成、違法な調査の指示や黙認。
これらは不正アクセス禁止法、刑法、個人情報保護法、差別禁止の趣旨に反する虞があるため厳禁です。社内規程に明記していても、法令に反する運用は認められません。
社内で先にできる安全な初期確認と、限界
外部調査の前に、社内で実施できる合理的な確認を優先します。いずれも「対象者を不当に特定しすぎない」「収集範囲を最小化する」姿勢が大切です。
今日からできる初期確認の例
- 就業規則・服務規程・情報セキュリティ規程の該当条項と、従業員への周知・同意状況の再確認。
- 勤怠・入退室・社用端末・社用通信のログ点検(規程上の根拠がある範囲に限定)。
- 社内の通報窓口・相談窓口の活性化(匿名通報の受付や報復禁止の明確化)。
- 関係部署・上長・同僚からの事実ベースのヒアリング(推測や噂話の排除、聴取記録の作成)。
- 証拠化を意識した資料保存(原本保全、改ざん防止、アクセス権限の限定)。
社内だけでは限界となる場面
- 勤務時間外の行動確認が必要で、社員間の監視では客観性が担保できない。
- 対外的な証拠性(第三者作成の調査報告書、連続写真、タイムライン)が求められる。
- 社内での直接調査が関係性を悪化させる、または情報漏えいの懸念が高い。
このような場合は、適法な手段と倫理基準を担保できる専門家の活用を検討する段階です。
探偵へ依頼すると何が分かる?何は分からない?
探偵が扱えるのは「適法な実地調査による事実確認」です。公共空間での行動観察、出入りの有無や同行者の確認、関係先の出入り状況など、客観的な事実を時系列で記録・報告できます。一方、居宅内の状況、通信内容、口座・通話履歴など、法的根拠なく取得できない情報は扱えません。
- 分かることの例:勤務時間中の離席・外出の実態、競業先との接触状況、業務車両の立ち寄り先、社内規程違反の疑いを裏づける外形的事実。
- 分からないことの例:自宅・私有地内の様子、非公開の個人データ(通話記録・銀行情報等)、鍵のかかった施設内部の状況、相手の思想信条や健康状態などの「推測」を超える情報。
報告書は「見た事実」を中心に構成され、結論断定や法的評価(懲戒の相当性、違法性の有無など)は行いません。紛争の見通しや処分の妥当性判断は、弁護士など適切な専門家にご相談ください。
代表的な調査方法と、期間・費用を左右する要素
従業員の素行調査では、尾行・張り込み・現地確認・聞き込み・公開情報の整理などを、目的に応じて組み合わせます。費用は個別見積ですが、次の条件で増減しやすくなります。
期間・費用に影響する主な条件
- 目的の明確さと必要な証拠の基準(「接触の有無」を確認するのか、「日常的な接触パターン」まで要るのか)。
- 調査対象の行動特性(出入り時刻の規則性、移動手段、立ち寄り先の数)。
- 調査時間帯(深夜・早朝・長時間稼働は人員と交通費が増えがち)。
- 対象人数と地点数(関係先が多いと工程が複雑化)。
- 報告書の粒度(写真・動画の点数やタイムライン精度、日報形式か合本か)。
見積時に必ず確認したいポイント
- 稼働時間の定義(移動・準備・待機のカウント方法、延長時の課金)。
- 人員体制(最小何名で、状況により何名まで増やすのか)。
- 経費の範囲(車両・交通・宿泊・機材の取り扱い)。
- 中止・延期・日程変更の条件(キャンセル料の発生タイミング)。
- 守秘義務と個人情報の取扱い(報告書・画像データの保管期間と廃棄方法)。
なお、「成功率」「必ず判明」などの保証は適法な調査では掲げられません。対象者の動きや外部環境に左右されるため、成果基準は現実的に設定する必要があります。
依頼前に準備しておく情報と社内体制
時間と費用の無駄を省き、適法性を担保するために、次の事項を整理しておくと円滑です。
準備する情報のチェックリスト
- 調査の目的(就業規則違反の疑い/情報漏えい防止/競業行為の有無確認など)。
- 必要な成果物(特定日の接触の有無/一定期間の行動パターン/写真の有無/時刻精度)。
- 対象者情報(氏名、役職、通勤手段、勤務スケジュール、よく行く場所の心当たり)。
- 既存の根拠資料(勤怠や位置、通報内容、社有資産の利用記録など、事実に基づく材料)。
- 社内規程・同意の状態(情報取得・監査・貸与物管理に関する条項の有無と周知実績)。
体制面でのポイント
- 人事・総務・情報セキュリティ・監査部門の連携と、最小限の「知る必要のある者」原則。
- 個人情報の保管場所・アクセス権限・保存期間・廃棄手順の明確化。
- 外部委託(探偵等)時の委託先監督と機密保持契約(NDA)。
- 通報者・対象者双方の人権配慮と報復禁止の手当て。
やってはいけない行為の具体例とリスク
実務で起こりがちな「一線越え」を、法律面のリスクとともに整理します。いずれも重大なトラブルの種です。
- 私物端末・私物SNSの覗き見や無断ログイン:不正アクセス、プライバシー侵害のリスク。パスワードの聞き出し・共有も危険。
- 自宅・私有地での張り込みや撮影、盗聴・盗撮:住居侵入や迷惑防止条例等に抵触の虞。証拠性も否定されやすい。
- 差別につながる情報の収集・評価:採用や人事処分の正当性を失わせ、行政指導・訴訟リスク。
- 無断GPS機器の設置:私物車両・持ち物への装着は特に危険。目的が正当でも手段が違法なら成果は無効化される。
「疑わしきはすべて収集」型の網羅調査は、法令違反や風評被害のリスクに直結します。必要最小限の的確な確認に絞りましょう。
調査後の社内対応:処分判断は慎重に、文書化と専門家の使い分けを
報告書を受領したら、まずは事実関係の再点検と反証機会の付与、就業規則の処分要件との整合性確認が重要です。処分の相当性判断や労働紛争対応は弁護士へ、労務管理・就業規則の整備は社労士へ相談するのが望ましい分担です。
当事務所は探偵としての実地調査に加え、行政書士として社内の通知文・誓約書・合意書・ヒアリング票など「事実経過を適切に記録するための文書」作成を支援できます。ただし、個別紛争の法律判断や代理交渉・訴訟代理は行えません。必要に応じて弁護士や警察等と連携し、適切な窓口へおつなぎします。
採用前の素行確認における留意点(バックグラウンドチェック)
内定者・応募者に対する素行確認は、実施目的や項目の設定を誤ると「公正な採用選考」に反するおそれがあります。応募者の人権に関わる事項(本籍・家族・宗教・支持政党・出身地・思想信条・病歴など)の収集は原則として不適切です。確認するなら、職歴の真偽や反社該当性チェックのように、業務適性や企業の安全に直結する範囲に限定し、本人同意と開示説明の体制を整えてください。
地域の事業者さまへ:生駒・奈良エリアの実情に合わせた進め方
生駒市や奈良市・大和郡山市・平群町・斑鳩町・三郷町・王寺町など、奈良北西エリアでは、製造・物流・医療福祉・小売など多様な業種が混在し、勤務時間帯や拠点の分散が調査設計に影響します。対象者の移動手段(自家用車・二輪・公共交通)や夜間稼働の有無により、人員配置や撮影体制が変わるため、見積段階で日常の行動パターンを可能な範囲で共有いただくと、無駄の少ない計画になります。
相談・依頼の目安:どの段階で専門家に声をかけるべきか
- 社内ログやヒアリングで合理的な疑いが強まり、勤務時間中の行動確認が必要なとき。
- 競業行為や情報持ち出しが疑われ、外形的な接触事実の立証が重要なとき。
- 社内での直接確認が難しく、第三者作成の客観的報告書が必要なとき。
身体や安全への差し迫った危険があるケースは、探偵への相談よりも先に110番など緊急通報を優先してください。刑事事件性の判断や告訴・告発の可否は弁護士・警察の所掌です。
まとめ:まずは社内の根拠整備と最小限の確認から——必要時のみ適法な外部調査へ
従業員の素行調査は、目的の正当性・範囲の限定・手段の適法性がそろって初めて実施できます。社内ログやヒアリングなど安全な手順で「疑いの合理性」を固め、処分判断は拙速にせず、客観的な事実を積み上げましょう。外部の実地調査が必要になった場合は、違法手段を用いないこと、個人情報の管理と委託先監督を徹底することが不可欠です。
生駒法務探偵事務所は、探偵としての実地調査に加え、行政書士として社内文書の整備や調査結果の整理など「手続と記録」を支える面からも伴走します。まずは状況をお聞かせください。調査が不要と判断される場合も含め、適切な進め方を一緒に検討いたします。

